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母乳育児と出産後母子ケアのもろもろ

母乳育児推進の背景には、出産後母子ケアが過度に合理化されていることへのアンチテーゼがあるのだろうとこないだ書いたのですが、下のURLで助産師さんたちの意見(1997年のもの)を見ると、その「合理化」(母子別室で、一定時間ごとに呼ばれて授乳等)が退院後の母乳育児を阻害する直接の原因になっていることが強く主張されています。
http://www.web-reborn.com/humanbirthpark/voice/breasfeeding.html
カンガルーケアの事故報道についても、問われるべきは新生児医療の質そのものであるはずであるといわれます。
http://www.web-reborn.com/topix/201006kangaroocare/kangaroocare.html
たしかにここには、一概に「母乳信仰」「母性信仰」などとくくれない、医療化そのものの問題があります。
母乳育児推進の取り組みが始まったのは、1990年前後にWHO/UNICEFが「母乳育児を成功させるための10カ条」を発してからの傾向のようで、歴史は長くないようです。
また、下のエントリのコメント欄での議論に見られるように、母乳育児で育てたグループがそうでないグループより若干よい発達をするという統計的データは、たしかにあるようです。
http://d.hatena.ne.jp/doramao/20091227/1261918472
http://whqlibdoc.who.int/publications/2007/9789241595230_eng.pdf
(しかしこの場合、「母乳育児で育てられなかったグループ」と、たとえば医薬品の治験の対象群つまり「ある薬物を投与してないグループ」は、同じ扱いに出来ないんじゃないかと思いますが、そこはどうなってるんだろうか。いやよく読めばいいのだが。)
カンガルーケアの危険については、長年それを指摘してきた産婦人科医師の方が下記のようなサイトにまとめています。
http://www.s-kubota.net/kanri/index_12.htm
一方で、母乳育児の推進自体については、今後も「危険」が見出されることはないでしょう。
ただ、問題は母親たちの置かれた状況です。それは、疫学的には表れてこないだろう類のものです。
下のサイトでは、母乳が出ない人ほど「専門家」を頼り、その専門家は必ず母乳のよさを称えるので、ますます母乳に固執するようになる負のスパイラルが語られています。
http://okwave.jp/qa/q5369942.html
ただでも辛い出産直後から「よい母であろう」と体を酷使してがんばった挙句、「何がよかったのか結局わからない」と真摯に反省するお母さんたちの姿は何だか…やはり見ててつらいです。
また個人的には、これらの母乳育児推進や脱医療化の運動が、「自然なお産」をめざす流れと合流していく部分に危うさを感じます。
ホメオパシーが出産・育児業界のなかで広がっていったことと上のような動向は、どこかでつながっている部分があると思います。問題は、「どこで」ということですが。
ともかく、くれぐれも幸せな出産育児生活や子ども時代を目指してほしいです、「自然」かどうかではなく。